定積分で面積を求める(解説)
積分は共通テスト、2次試験ともに頻出の分野です。特に定積分を用いて面積を求める問題は非常によく出題されています。
この面積を求めるための計算、これ自体はさして複雑な仕組みの計算ではありません。計算部分だけを見れば、中学生でも十分やれるレベルになっています。
ですが、実際の数学のテスト(これは学校の定期テストから入試の本番までを含みます)では、時間の不足がしばしば皆さんの足を引っ張ります。
そもそも、前準備に時間がかかります。「この2次関数はこんな関数で、そして与えられた接点における接線は……」のようなお馴染みのやつですね。
ただ、実際にはこれで終わらず、そこから更に定積分の計算が必要になります。 代入、分数、累乗、引き算等々、皆さんの計算を誤らせる要素には事欠きません。
そこで、このページでは、この面積を求める作業が少しでも楽になるように、種々の考え方や公式を紹介していきます。極力手間暇を減らしつつ、効率よく問題を解いていきましょう。
まず、ここで一度定義を確認しておきましょう。
ある関数\( f(x) \)の原始関数、つまり積分先の関数を\( F(x)\)。積分範囲を\(a, b\)とすると、
\( \int_{a}^{b} f(x) dx = \lbrack F(x) \rbrack_{a}^{b} = F(b) - F(a) \)
と、これだけの内容です。原始関数さえ求められれば順当に計算可能です。
試しに、具体的な例を用いて計算を見てみましょう。
なお、「普通の計算はできるよ」という方は飛ばして構いません。
まずは項が一つのときの計算です。
積分したい関数が◯次関数のときは、以下の公式を利用します。
\( \int x^n dx = \dfrac{1}{n+1} x^{n+1} + C \) (\(C\); 積分定数)
例題1: \( \int_{-2}^{3} x^2 dx \)
\( = \left\lbrack \dfrac{1}{2+1} x^{2+1} \right\rbrack_{-2}^{3} \)
\( = \dfrac{1}{3} \left\lbrack x^3 \right\rbrack_{-2}^{3} \)
\( = \dfrac{1}{3} \left\lbrace 3^3 - (-2)^3 \right\rbrace \)
\( = \dfrac{35}{3} \)
次は多項式の計算です。
といっても、先程の公式を項ごとに適用して、そこに代入するだけです。
例題2: \( \int_{-2}^{3} (x^2 + 2x) dx \)
\( = \left\lbrack \dfrac{1}{2+1} x^{2+1} + 2 \cdot \dfrac{1}{1+1} x^{1+1} \right\rbrack_{-2}^{3} \)
\( = \left\lbrack \dfrac{1}{3} x^3 + x^2 \right\rbrack_{-2}^{3} \)
\( = \left( \dfrac{1}{3} \cdot 3^3 + 3^2 \right) - \left\lbrace \dfrac{1}{3}\cdot (-2)^3 + (-2)^2 \right\rbrace \)
\( = 18 - \dfrac{4}{3} \)
\( = \dfrac{50}{3} \)
さて、定積分の計算の確認は以上ですが、この時点でわりと複雑な計算になっていることが伝わるでしょうか。
眉をひそめるほどの難しさではないですが、時間自体は割りとかかってしまいます。
落ち着いて計算できる練習の段階であればさして問題にならないかもしれませんが、本番の限られた時間中で行えばミスが増えるのも納得できる複雑さです。
さてお次は、定積分を用いた面積の計算になります。
先程と同じく、まずは公式の確認からいってみましょう。
ある区間、\( a \leqq x \leqq b \)において、上にある関数が\( y = f(x) \)、下にある関数が\( y = g(x) \)であるとき、
その関数で囲まれた面積\( S \)は、
\( S = \int_{a}^{b} \left\lbrace f(x) - g(x) \right\rbrace dx \)
と計算できる。
ここで注目してほしいのは、上下関係に言及していることです。
これは定積分を用いた面積の計算では常に確認しておかなければならない事項になります。
3次関数や2次関数、直線など様々な関数が登場する中で、みなさんは的確にそれらの上下関係を考える必要があるわけです。
このあたりに微分と絡めて出題される理由があると言えるでしょう。
それでは早速、面積を計算してみましょう。
例題3: \( y = x^2 -5x + 6\)と\( x \)軸で囲まれた部分の面積を求めよ。
まずは\( y = x^2 -5x + 6 \)と\( x \)軸の関係をチェックしましょう。
今回の2次関数は、2次の係数が正なので下に凸。さらに\( x \)軸、つまり\( y=0 \)との交点は、例のごとく連立して、
\( \left\{ \begin{array}{l} y = x^2 - 5x + 6 \\ y = 0 \end{array} \right. \)
\( x^2 - 5x + 6 = 0\)
\( (x - 2)(x - 3) = 0 \)
\( x = 2, 3 \)
と求められます。これをグラフに描くと、以下のような感じになります。
このようにグラフが描ければ、あとは先程の公式に当てはめるだけ……
なのですが、この上下関係、グラフを描かなければ求められないということはないです。
具体的には以下のように不等式を作って解くことで、ある程度の上下関係を求めることが可能です。
\( x^2 - 5x + 6 \geqq 0 \)
\( (x - 2)(x - 3) \geqq 0 \)
\( x \leqq 2, 3 \leqq x \)
この結果を見ると、\( y = x^2 - 5x + 6 \)が\( y = 0 \)より上になっている\( x \)の範囲は閉じていないことがわかります。
裏を返すと、閉じている範囲\( 2 \leqq x \leqq 3 \)では\( y = 0 \)が上であることがわかります。
これはこの例だけでなく、他の組み合わせでも利用できます。たとえば、2次関数\( y = x^2 \)と1次関数\( y = x \)だと、
\( x^2 \geqq x \)
\( x^2 - x \geqq 0 \)
\( x(x - 1) \geqq 0\)
\( x \leqq 0, 1 \leqq x \)
となり、囲まれた範囲は\( 0 \leqq x \leqq 1 \)では\( y = x \)の方が上だということがわかります。
もちろん、特に難易度が高い問題ではグラフをしっかりと描くことで得られるものもありますし、グラフを描くという行為自体が全く不要というわけではありません。
一つの手段として知っておくようにしましょう。
さて、それでは問題に戻って、続きを解いていきましょう。
今回の問題では、\( y = \color{blue}x^2 - 5x + 6 \)が下で、\( y = \color{red}0 \)が上。さらに\( 2 \leqq x \leqq 3 \)の範囲で囲まれているので、その面積は、
\( \int_{2}^{3} \left\lbrace \color{red}0\color{black} - \left( \color{blue}x^2 - 5x + 6\color{black} \right) \right\rbrace dx \)
\( = \int_{2}^{3} \left( -x^2 + 5x - 6 \right) dx \)
\( = \left\lbrack - \dfrac{1}{3} x^3 + \dfrac{5}{2} x^2 - 6x \right\rbrack_{2}^{3} \)
\( = \left( - \dfrac{1}{3} \cdot 3^3 + \dfrac{5}{2} \cdot 3^2 - 6 \cdot 3 \right) - \left( - \dfrac{1}{3} \cdot 2^3 + \dfrac{5}{2} \cdot 2^2 - 6 \cdot 2 \right) \)
\( = \left(-9 + \dfrac{45}{2} - 18 \right) - \left( -\dfrac{8}{3} + 10 - 12 \right) \)
\( = -9 + \dfrac{45}{2} - 18 + \dfrac{8}{3} - 10 + 12 \)
\( = -9 - 18 - 10 + 12 + \dfrac{45}{2} + \dfrac{8}{3} \)
\( = -25 + \dfrac{135 + 16}{6} \)
\( = \dfrac{-150 + 151}{6} \)
\( = \dfrac{1}{6} \)
……といった流れで、答えは結局\( \dfrac{1}{6} \)になります。
少々刻んだところもありますが、とにかく計算の手間が凄いことがわかってもらえるでしょうか。
定積分の公式の形からして、分数が出ることが当たり前のようなところがあります。
説明用に簡易化した問題でこれなのですから、実際の問題ではさらに複雑化している可能性もあります。
以上のように、定積分で面積を求める計算は、時間が限られた中でやるにはかなり重いものとなります。
さて、次はいよいよ、公式を用いた面積の計算になります。
ここで、使う公式は以下になります。
\( \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)(x - \beta) dx = -\dfrac{1}{6} (\beta - \alpha)^3 \) (\( \alpha, \beta \); 定数)
なお、なぜこの公式が成り立つのか?については、今回の本筋ではありませんので、下に折りたたんでおきます。
特にひねらずに、そのまま計算していっても証明は可能ですが、せっかくなので数Ⅲの公式を利用したより発展的な証明をおいておきます。
なかなか難易度は高いですが、その分得られるものも多いので、余力があれば追いかけてみて下さい。
まず、この公式を確認しておきましょう。
\( \int (x - \alpha)^n dx = \dfrac{1}{n+1} (x - \alpha)^{n+1} + C \) (\( C; \)積分定数\()\)
この公式は、数Ⅲで学ぶものですが、そこまで取っつきづらい感じはしないのではないでしょうか。
せっかくなので、これを使った不定積分の計算をいくつか書いておきましょう。
\( \int (x - 5)^2 dx = \dfrac{1}{2 + 1} (x - 5)^{2+1} + C = \dfrac{1}{3} (x - 5)^3 + C\)
\( \int (x + 2)^3 dx = \dfrac{1}{3 + 1} (x + 2)^{3+1} + C = \dfrac{1}{4} (x + 2)^4 + C\)
\( \int (x - 1)^4 dx = \dfrac{1}{4 + 1} (x - 1)^{4+1} + C = \dfrac{1}{5} (x - 1)^5 + C\)
いかがでしょう。あまり正確ではありませんが、感覚としては「\(x^n\)が\((x-\alpha)^n\)になっても、同じように取り扱える」と考えてもらえれば大丈夫です。
それでは、この公式を利用して\( \dfrac{1}{6} \)公式の証明をしていきましょう。
\( \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)(x - \beta) dx \)
\( = \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)\lbrace(x - \alpha) + (\alpha - \beta)\rbrace dx \)
さて、ここでいったん軽く説明をはさみます。
今、\( (x - \beta) = \lbrace(x - \alpha) + (\alpha - \beta)\rbrace \)という式変形を行いました。
計算してもらえればわかるのですが、\( (x - \beta) \)に\( -\alpha + \alpha \)、つまり0を足しているだけなので、イコールが崩れてはいません。
なぜわざわざ妙な変形を使ったのかは、後々判明します。今は、無理矢理にでも\( ( x - \alpha) \)が欲しかった、ということだけ確認しておいてください。
それでは続きの計算を行っていきましょう。
\( = \int_{\alpha}^{\beta} \lbrace (x - \alpha)^2 + (\alpha - \beta) (x - \alpha) \rbrace dx \)
ここはシンプルに展開法則を使って、かっこの外側にある\( (x - \alpha) \)を、中にある\( (x - \alpha) \)と\( (\alpha - \beta) \)にかけました。
両方の項に\( (x - \alpha) \)が含まれているのがポイントです。
\( = \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)^2 dx + \int_{\alpha}^{\beta} (\alpha - \beta) (x - \alpha) dx \)
\( = \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)^2 dx + (\alpha - \beta) \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha) dx \)
ここでは積分記号をそれぞれに振り分けました。一番最初にやった多項式の計算と同じ流れです。
さらに、\( (\alpha - \beta) \)は積分の対象である\( x \)と無関係な文字、つまり定数扱いなので前に出しています。
\( = \left\lbrack \dfrac{1}{2 + 1} (x - \alpha)^{2 + 1} \right\rbrack_{\alpha}^{\beta} + (\alpha - \beta) \left\lbrack \dfrac{1}{1 + 1} (x - \alpha)^{1 + 1} \right\rbrack_{\alpha}^{\beta} \)
\( = \dfrac{1}{3} \left\lbrack (x - \alpha)^3 \right\rbrack_{\alpha}^{\beta} + \dfrac{1}{2} (\alpha - \beta) \left\lbrack (x - \alpha)^2 \right\rbrack_{\alpha}^{\beta} \)
この計算では、この説明の初めに書いた数Ⅲの公式を使い、全体を積分しています。
また、細かい部分の計算と、定数を前に出す作業も合わせて行いました。
\( = \dfrac{1}{3} \left\lbrace (\beta - \alpha)^3 - (\alpha - \alpha^3) \right\rbrace + \dfrac{1}{2} (\alpha - \beta) \left\lbrace (\beta - \alpha)^2 - (\alpha - \alpha)^2 \right\rbrace \)
\( = \dfrac{1}{3} (\beta - \alpha)^3 + \dfrac{1}{2} (\alpha - \beta) (\beta - \alpha)^2 \)
この計算最大のポイントがここです。多少無理やりにでも\( (x - \alpha) \)を残していたおかげで、\( \alpha \)を代入したときに0がでてきて、引き算をやる必要がなくなっています。
実質的に計算量が半分になっているといってもよいでしょう。
ここまでくれば、あとは残りを計算していくだけです。
\( = \dfrac{1}{3} (\beta - \alpha)^3 + \dfrac{1}{2} \left\lbrace - (\beta - \alpha) \right\rbrace (\beta - \alpha)^2 \)
\( = \dfrac{1}{3} (\beta - \alpha)^3 - \dfrac{1}{2} (\beta - \alpha)^3 \)
\( = - \dfrac{1}{6} (\beta - \alpha)^3 \)
一つだけ\( (\alpha - \beta) \)になっていて収まりが悪いので、マイナスでくくることで中身を反転させて、3乗にまとめました。
最後に両方の\( (\beta - \alpha) \)をまとめて終わりです。
説明を省いた通しの計算は、以下のようになります。
\( \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)(x - \beta) dx \)
\( = \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)\lbrace(x - \alpha) + (\alpha - \beta)\rbrace dx \)
\( = \int_{\alpha}^{\beta} \lbrace (x - \alpha)^2 + (\alpha - \beta) (x - \alpha) \rbrace dx \)
\( = \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)^2 dx + \int_{\alpha}^{\beta} (\alpha - \beta) (x - \alpha) dx \)
\( = \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)^2 dx + (\alpha - \beta) \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha) dx \)
\( = \left\lbrack \dfrac{1}{2 + 1} (x - \alpha)^{2 + 1} \right\rbrack_{\alpha}^{\beta} + (\alpha - \beta) \left\lbrack \dfrac{1}{1 + 1} (x - \alpha)^{1 + 1} \right\rbrack_{\alpha}^{\beta} \)
\( = \dfrac{1}{3} \left\lbrack (x - \alpha)^3 \right\rbrack_{\alpha}^{\beta} + \dfrac{1}{2} (\alpha - \beta) \left\lbrack (x - \alpha)^2 \right\rbrack_{\alpha}^{\beta} \)
\( = \dfrac{1}{3} \left\lbrace (\beta - \alpha)^3 - (\alpha - \alpha^3) \right\rbrace + \dfrac{1}{2} (\alpha - \beta) \left\lbrace (\beta - \alpha)^2 - (\alpha - \alpha)^2 \right\rbrace \)
\( = \dfrac{1}{3} (\beta - \alpha)^3 + \dfrac{1}{2} (\alpha - \beta) (\beta - \alpha)^2 \)
\( = \dfrac{1}{3} (\beta - \alpha)^3 + \dfrac{1}{2} \left\lbrace - (\beta - \alpha) \right\rbrace (\beta - \alpha)^2 \)
\( = \dfrac{1}{3} (\beta - \alpha)^3 - \dfrac{1}{2} (\beta - \alpha)^3 \)
\( = - \dfrac{1}{6} (\beta - \alpha)^3 \)
以上になります。この計算は後に登場する他の公式にも活用できるので、習得しておいて損はないと思います。
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この公式で重要なのは、積分範囲と因数分解に使われた定数が一致していることです。
つまり、\( \int_{\color{green}1\color{black}}^{\color{magenta}3} \color{black} (x - \color{green}1\color{black}) (x - \color{magenta}3\color{black}) dx \)には公式が使えますが、
\( \int_{\color{green}1\color{black}}^{\color{magenta}3} \color{black} (x - \color{green}1\color{black}) (x - \color{orange}5\color{black}) dx \)や、
\( \int_{\color{green}-5\color{black}}^{\color{magenta}-3\color{black}} (x - \color{skyblue}1\color{black}) \left\lbrace x - (\color{magenta}-3\color{black}) \right\rbrace dx = \int_{\color{green}-5\color{black}}^{\color{magenta}-3\color{black}} (x - \color{skyblue}1\color{black}) ( x + \color{magenta}3\color{black} ) dx \)には公式が使えない、ということです。
あくまで両方が一致していないとダメです。注意しましょう。
これを見て、まだあまり公式に慣れていない方は「因数分解できて、さらに積分範囲が一致するような都合が良いことが度々あるのか?」と感じるかもしれません。
結論から言いますと、あります。何なら頻繁に出てきます。
たとえば、上で例としたあげた問題を見てみましょう。
例題3: \( y = x^2 -5x + 6\)と\( x \)軸で囲まれた部分の面積を求めよ。
先ほど、この2つの上下関係を確認するために、以下のような不等式を解きました。
\( x^2 - 5x + 6 \geqq 0 \)
\( (x - 2)(x - 3) \geqq 0 \)
また、その結果、以下のような式で面積を求めることとなりました。
\( \int_{2}^{3} \left\lbrace 0 - \left( x^2 - 5x + 6 \right) \right\rbrace dx \)
\( = \int_{2}^{3} \left( -x^2 + 5x - 6 \right) dx \)
さて、さっきはここから即座に積分を行いましたが、ここでは不等式を参考に、いったん式を因数分解してみましょう。
\( = \int_{2}^{3} - (x - 2)(x - 3) dx \)
\( = - \int_{\color{green}2 \color{black}}^{\color{magenta}3} \color{black} (x - \color{green}2 \color{black})(x - \color{magenta}3 \color{black}) dx \)
式をよくよく見てみると、\( \dfrac{1}{6} \)公式を使える形が登場していますね。よって、このまま一気に面積を求められます。
\( = - \left\lbrace - \dfrac{1}{6} (\color{green}3\color{black} - \color{magenta}2\color{black})^3 \right\rbrace \)
\( = \dfrac{1}{6} \)
以上のように、囲まれた面積を求めるためには交点と上下関係が必要になりますが、そもそもこの作業に自然と因数分解の形が登場します。積分される関数も同様です。
また、交点間の面積を求めるので、積分範囲にもこれまた交点と同じ値が登場します。
つまり、多少大げさに言うのであれば、この公式は必然的に登場することになるとも言えるでしょう。偶然ではないわけですね。
他の例も確認してみましょう。
例題4: \( y = x^2 \)と\( y = x \)で囲まれた部分の面積を求めよ。
今回はx軸、つまり\( y = 0 \)が相方ではありませんが、やることは同じです。
まず、上下関係を求めるために、\( x^2 \geqq x \)を解きます。
\( x^2 - x \geqq 0 \)
\( x (x - 1) \geqq 0 \)
\( x \leqq 0, 1 \leqq x \)
この結果から、この2つの関数で囲まれた面積は\( 0 \leqq x \leqq 1 \)の範囲にあり、\(y = \color{blue}x^2\color{black} \)は下、\( y = \color{red}x\color{black} \)は上であることがわかります。
実際、グラフは以下のようになっていますので、これは正しい関係です。
そのため求めたい面積を\( S \)とすると、
\( S = \int_{0}^{1} \left( \color{red}x\color{black} - \color{blue}x^2\color{black} \right) dx \)
\( = \int_{0}^{1} - \left( x^2 - x \right) dx \)
\( = \int_{0}^{1} -x (x - 1) dx \)
\( = - \int_{\color{green}0\color{black}}^{\color{magenta}1\color{black}} (x - \color{green}0\color{black}) (x - \color{magenta}1\color{black}) dx \)
\( = - \left\lbrace -\dfrac{1}{6} (\color{magenta}1\color{black} - \color{green}0\color{green}\color{black})^3 \right\rbrace \)
\( = \dfrac{1}{6} \)
こちらでもやはり同様に公式が使えましたね。
このように、\( \dfrac{1}{6} \)公式は自然と登場するものであり、機会を逃さずに使うことで計算を大幅に楽にできる優れた公式なのです。
ここで一度、ここまで説明してきたことをまとめておきましょう。
ある区間、\( \alpha \leqq x \leqq \beta \)において、上にある関数が\( y = f(x) \)、下にある関数が\( y = g(x) \)であるとき、
その関数で囲まれた面積\( S \)は、\( S = \int_{\alpha}^{\beta} \left\lbrace f(x) - g(x) \right\rbrace dx \)と計算できる。
また、\( f(x) \)と\( g(x) \)が\( x = \alpha, \beta \)で交わる、
すなわち、\( f(x) - g(x) = k (x - \alpha)(x - \beta) \)と因数分解できるのであれば、
\( \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)(x - \beta) dx = -\dfrac{1}{6} (\beta - \alpha)^3 \) (\( \alpha, \beta \); 定数)を用いて、
\( S = \int_{\alpha}^{\beta} \left\lbrace f(x) - g(x) \right\rbrace dx \)
\( = \int_{\alpha}^{\beta} k (x - \alpha)(x - \beta) dx \)
\( = k \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)(x - \beta) dx \)
\( = k \left\lbrace -\dfrac{1}{6} (\beta - \alpha)^3 \right\rbrace \)
\( = - \dfrac{k}{6} (\beta - \alpha)^3 \)
と計算できる。
以上になります。実際の計算においては、
という流れで解いていくことになります。
最後に、2次関数とx軸、2次関数と直線以外のパターンも確認してみましょう。
例題5: \( y = x^2 \)と\( y = -x^2 + 2 \)で囲まれた部分の面積を求めよ。
まずは\( y = x^2 \)と\( y = -x^2 + 2 \)の上下関係を確認するために、以下の不等式を解きます。
\( x^2 \geqq -x^2 + 2 \)
\( 2x^2 - 2 \geqq 0 \)
\( 2(x - 1)(x + 1) \geqq 0 \)
\( x \leqq -1, 1 \leqq x \)
以上の計算から、2つの関数で囲まれた部分の面積は、\( -1 \leqq x \leqq 1 \)にあり、この範囲では\( y = \color{red} -x^2 + 2 \color{black}\)が上、\( y = \color{blue} x^2 \color{black} \)が下であることがわかります。
よって求めたい面積を\( S \)とすると、
\( S = \int_{-1}^{1} \left\lbrace (\color{red} -x^2 + 2 \color{black}) - \color{blue} x^2 \color{black} \right\rbrace dx \)
\( = \int_{-1}^{1} \left( -2x^2 + 2 \right) dx \)
\( = \int_{-1}^{1} -2 (x + 1)(x - 1) dx \)
\( = -2 \int_{\color{green}-1\color{black}}^{\color{magenta}1\color{black}} \lbrace x - (\color{green}-1\color{black}) \rbrace (x - \color{magenta}1\color{black}) dx \)
\( = -2 \left\lbrack -\dfrac{1}{6} \left\lbrace 1 - (-1) \right\rbrace^3 \right\rbrack \)
\( = \dfrac{8}{3} \)
となります。
ここまで2次関数とx軸、2次関数と直線、2次関数同士で囲まれた面積を見てきましたが、実は3次の係数が等しい場合に限り、3次関数同士でも公式を利用可能です。
3次の係数が等しいことで、差を取ったときに3次の部分が消えます。あとは\( (x - \alpha)(x - \beta) \)の形に因数分解さえできればOKです。
ということで早速見てみましょう。
例題6: \( y = x^3 + x + 1 \)と\( y = x^3 + x^2 + x \)で囲まれた部分の面積を求めよ。
まずは上下関係と交点の確認を兼ねて、不等式を解きます。
\( x^3 + x + 1 \geqq x^3 + x^2 + x \)
\( -x^2 + 1 \geqq 0 \)
\( -(x^2 - 1) \geqq 0 \)
\( -(x + 1)(x - 1) \geqq 0 \)
\( -1 \leqq x \leqq 1 \)
以上の計算から、2つの3次関数で囲まれた面積部分の面積は、\( -1 \leqq x \leqq 1 \)にあり、この範囲では\( y = \color{red} x^3 + x + 1 \color{black} \)が上、\( y = \color{blue} x^3 + x^2 + x \color{black} \)が下にあることがわかります。
よって求めたい面積を\( S \)とすると、
\( S = \int_{-1}^{1} \left\lbrace \left( \color{red} x^3 + x + 1 \color{black} \right) - \left( \color{blue} x^3 + x^2 + x \color{black} \right) \right\rbrace dx \)
\( = \int_{-1}^{1} (-x^2 + 1) dx \)
\( = - \int_{-1}^{1} (x + 1)(x - 1) dx \)
\( = - \int_{\color{green}-1\color{black}}^{\color{magenta}1\color{black}} (x - (\color{green}-1\color{black}))(x - \color{magenta}1\color{black}) dx \)
\( = - \left\lbrack - \dfrac{1}{6} \left\lbrace \color{magent}1\color{black} - (\color{green}-1\color{black})\right\rbrace^3 \right\rbrack\)
\( = \dfrac{4}{3} \)
となります。
解説は以上になります。いかがでしたか。
途中でも書いた通り、\( \dfrac{1}{6} \)公式は慣れるまでは中々難儀しますが、使いこなせるようになれば非常に頼もしい公式です。
慣れるための一番のコツは、練習の時から、常に「この問題には適用できるだろうか?」と考えておくことです。
確信を持っていないと、いざ公式が使えそうなときにも適用することができません。このあたりは練習量がものを言いますね。
その他の面積のところでふれたように、ざっくり2つの交点を持つ関数で囲まれた面積であれば、\( \dfrac{1}{6} \)公式が利用できます。
たくさん練習して、マスターしていきましょう。