定積分で面積を求める(解説)
今回は\( \dfrac{1}{3} \)公式を確認していきます。
お話の内容としては\( \dfrac{1}{6} \)公式と同じく、「いかに公式が使える場面を見つけて、それを適用していくか」というものになります。
なお、\( \dfrac{1}{3} \)公式が\( \dfrac{1}{6} \)公式と比べて応用的なものであることを踏まえて、\( \dfrac{1}{6} \)公式の序盤で説明したような基礎的な部分は省いていきます。
もし、定積分の基本的な考え方や、\( \dfrac{1}{6} \)公式の使い方などに不安がある場合は、まずは以下のリンクから解説を確認してみてください。こちらは基礎から解説しています。 (解説を見る)
さっそく、公式を用いた面積の計算を確認していきましょう。
今回使う公式は以下になります。
\( \int (x - \alpha)^2 dx = \dfrac{1}{3} (x - \alpha)^3 + C \) (\( C; \)積分定数)
この公式は、\( \dfrac{1}{6} \)公式の方の証明でも利用していましたね。今回は証明に利用するのではなく、そのまま利用していきます。
重要なのはずばり、積分対象の関数が2乗にまとまっていることになります。
\( \dfrac{1}{6} \)公式では、関数同士が2つの交点を持っていることが使用の第一条件でした。
それにあやかって考えると、今回は関数同士が1つの重解、すなわち接点を持っている必要があります。
積分範囲は特に指定されていませんので、その点では\( \dfrac{1}{6} \)公式よりゆるいといえるでしょう。
これだけ聞くと、今一つ使い道がぴんと来ない方もいると思いますので、ここでは具体的な例を示していきます。
シンプルにわかりやすいのは、以下のような接線が登場するパターンですね。
例題1: \( y = x^2 \)と、その上の点\( (2, 4) \)における接線、および\( y \)軸で囲まれた部分の面積を求めよ。
まずは接線を求めてみましょう。
\( y' = 2x \)より、\( x = 2 \)における接線の傾きは\( 2 \cdot 2 = 4 \)となります。
そのため、点\( (2, 4) \)における接線は、
\( y - 4 = 4 (x - 2) \)
\( y = 4x - 4 \)
また、\( y = x^2 \)が下に凸であることからなんとなくわかりますが、念のために不等式を使って上下関係も把握しておきましょう。
\( x^2 \geqq 4x - 4\)
\( x^2 - 4x + 4 \geqq 0 \)
\( (x - 2)^2 \geqq 0 \)
この流れから、すべての\( x \)で\( y = \color{red}x^2 \)が上、\( y = \color{blue} 4x - 4 \)が下であることがわかります。
現時点で面積も含めたグラフを描くと、以下のようになりますので、これは正しいです。
上に\( y = \color{red} x^2 \color{black} \)、下に\( y = \color{blue} 4x - 4 \)があり、
さらに\( 0 \leqq x \leqq 2 \)の間で囲まれているので、求めたい面積をSとすると以下のように求められます。
\( S = \int_{0}^{2} \left\lbrace \color{red} x^2 \color{black} - \left( \color{blue} 4x - 4 \color{black} \right)\right\rbrace dx \)
\( = \int_{0}^{2} (x^2 - 4x + 4) dx \)
定義通り定積分をこなしていっても答えは求められますが、ここではさらに因数分解してみましょう。
\( = \int_{0}^{2} (x - 2)^2 dx \)
全体が2乗にまとまっているので、公式を使って以下のように一気に計算可能です。あとはそのまま計算を進めれば
\( = \left\lbrack \dfrac{1}{3} (x - 2)^3 \right\rbrack_{0}^{2} \)
\( = \dfrac{1}{3} \left\lbrack (x - 2)^3 \right\rbrack_{0}^{2} \)
\( = \dfrac{1}{3} \left\lbrace (2 - 2)^3 - (0 - 2)^3 \right\rbrace \)
\( = \dfrac{8}{3} \)
というのが答えとなります。
いかがでしょうか?なお、公式を全く利用しない計算ですと、以下のような流れになります。計算量を比較してみてください。
\( S = \int_{0}^{2} (x^2 - 4x + 4) dx \)
\( = \left\lbrack \dfrac{1}{3} x^3 - 2x^2 + 4x \right\rbrack_{0}^{2} \)
\( = \left( \dfrac{1}{3} \cdot 2^3 - 2 \cdot 2^2 + 4 \cdot 2 \right) - \left( \dfrac{1}{3} \cdot 0^3 - 2 \cdot 0^2 + 4 \cdot 0 \right) \)
\( = \left( \dfrac{8}{3} - 8 + 8 \right) - 0 \)
\( = \dfrac{8}{3} \)
幸いにして0が用いられているので、そこまで複雑な計算にはなっていませんが、やはり少々重たい計算と言わざるをえません。
ちなみに、1点で接しているものであれば、接線以外でも構いません。別の例も見てみましょう。
例題2: \( y = -x^2 + 3x + 1 \)と、\( y = x^2 - x + 3 \)と\( x = -1 \)で囲まれた部分の面積を求めよ。
さて、例のごとく、上下関係と交点を確認するために不等式を解いていきましょう。
\( -x^2 + 3x + 1 \geqq x^2 - x + 3 \)
\( -2x^2 + 4x - 2 \geqq 0 \)
\( -2(x^2 - 2x + 1) \geqq 0 \)
\( 2(x - 1)^2 \leqq 0 \)
この不等式が成り立つのは、\( x = 1 \)という一点に限られます。
つまり、\( x = 1 \)以外では、常に\( y = \color{red}x^2 - x + 3\)が上、\( y = \color{blue} -x^2 + 3x + 1 \)が下にあるということです。
実際に上下関係と、その間にできる面積を示したグラフは以下のようになっていますので、これは正しいです。
これらを踏まえて、求めたい面積を\( S \)とすると、
\( S = \int_{-1}^{1} \left\lbrace \left( \color{red}x^2 - x + 3 \color{black} \right) - \left( \color{blue} -x^2 + 3x + 1 \color{black} \right) \right\rbrace dx \)
\( = \int_{-1}^{1} \left( 2x^2 - 4x + 2 \right) dx \)
\( = \int_{-1}^{1} 2(x - 1)^2 dx \)
\( = 2 \left\lbrack \dfrac{(x - 1)^3}{3} \right\rbrack_{-1}^{1} \)
\( = 2 \left\lbrace \dfrac{(1 -1)^3}{3} - \dfrac{(-1 - 1)^3}{3} \right\rbrace \)
\( = 2 \cdot \dfrac{8}{3} \)
\( = \dfrac{16}{3} \)
となります。これが答えです。
さらにさらに接線が2つある場合にも有効です。
例題3: \( y = x^2 \)と、2つの接点\( x = -1, 3 \)における接線で囲まれた部分の面積を求めよ。
まずは接線を求めていきましょう。
\( x = -1 \)を\( y = x^2 \)に代入すると、\( y = (-1)^2 = 1 \)となるので、接点は\( (-1, 1) \)であることがわかります。
また、\( y' = 2x \)より、\( x = -1 \)における接線の傾きは、\( y' = 2 \cdot (-1) = -2 \)です。
そのため、\( x = -1 \)における接線は、
\( y = -2 \left\lbrace x - (-1) \right\rbrace + 1 = -2x -1 \)であることがわかります。
同じように、\( x = 3 \)を\( y = x^2 \)に代入すると接点は\( (3, 9) \)、
接線の傾きは\( y' = 2 \cdot 3 = 6 \)となるので、\( x = 3 \)における接線は、
\( y = 6 (x - 3) + 9 = 6x - 9 \)となります。
次に面積を求めていくのですが、ご存知の通り面積では上下関係が重要です。
下に凸の2次関数で、2本の接線が使われているので、なんとなく予想はできるのですが、念のためこれまでのように不等式を解いてみましょう。
まずは\( y = x^2 \)と\( y = -2x - 1 \)の上下関係です。
\( x^2 \geqq -2x - 1 \)
\( x^2 + 2x + 1 \geqq 0 \)
\( (x + 1)^2 \geqq 0 \)
これは全ての\( x \)で成り立ちます。よって、\( y = \color{red}x^2\color{black} \)が常に上、\( y = \color{blue}-2x - 1\color{black} \)が常に下です。
同じように、\( y = x^2 \)と\( y = 6x - 9 \)の上下関係を確認します。
\( x^2 \geqq 6x - 9 \)
\( x^2 - 6x + 9 \geqq 0 \)
\( (x - 3)^2 \geqq 0 \)
これも同様に、全ての\( x \)で成り立ち、\( y = \color{red}x^2\color{black} \)が常に上、\( y = \color{orange}6x - 9\color{black} \)が常に下です。
以上のように、接線が使われていることから、上下関係はわかりやすいものになっています。
ただ、面積を求める際には少し注意が必要です。
というのも、以下のグラフのように接線の交点である点\( \color{purple} A \)を境目に上下関係、正確には下に来るものが入れ替わるからです。
そのため、実際はここからさらに接線同士の交点を求めて、そこを境目に左と右で分割して面積を求める必要があります。
接線の交点は、
\( -2x - 1 = 6x - 9 \)
\( x = 1 \)となり、
また、その\( y \)座標は、\( x \)座標を大入試、
\( y = 6 \cdot 1 - 9 = -3\)となります。
これでようやく準備が整いました。接点の左側の面積を\( S_1 \)、右側の面積を\( S_2 \)としてそれぞれ求めていきましょう。
\( S_1 \)は上が\( y = \color{red} x^2 \color{black} \)、下が\( y = \color{blue} -2x - 1 \color{black} \)で、\( -1 \leqq x \leqq 1 \)の範囲にできる面積なので、
\( S_1 = \int_{-1}^{1} \left\lbrace \left( \color{red} x^2 \color{black} \right) - \left( \color{blue} -2x - 1 \color{black} \right)\right\rbrace dx \)
\( = \int_{-1}^{1} \left( x^2 + 2x + 1 \right) dx \)
\( = \int_{-1}^{1} (x + 1)^2 dx \)
\( = \left\lbrack \dfrac{(x + 1)^3}{3} \right\rbrack_{-1}^{1} \)
\( = \dfrac{1}{3} \left\lbrace (1 + 1)^3 - (-1 + 1)^3 \right\rbrace \)
\( = \dfrac{8}{3} \)
\( S_2 \)は上が\( y = \color{red} x^2 \color{black} \)、下が\( y = \color{orange} 6x - 9 \color{black} \)で、\( 1 \leqq x \leqq 3 \)の範囲にできる面積なので、
\( S_2 = \int_{1}^{3} \left\lbrace \left( \color{red} x^2 \color{black} \right) - \left( \color{orange} 6x - 9 \color{black} \right)\right\rbrace dx \)
\( = \int_{1}^{3} \left( x^2 - 6x + 9 \right) dx \)
\( = \int_{1}^{3} (x - 3)^2 dx \)
\( = \left\lbrack \dfrac{(x - 3)^3}{3} \right\rbrack_{1}^{3} \)
\( = \dfrac{1}{3} \left\lbrace (3 - 3)^3 - (1 - 3)^3 \right\rbrace \)
\( = \dfrac{8}{3} \)
よって求めるべき面積\( S \)は、
\( S = S_1 + S_2 \)
\( = \dfrac{8}{3} + \dfrac{8}{3} \)
\( = \dfrac{16}{3} \)
となり、これが答えです。
ちなみに、実はこの2次関数と2本の接線が作る面積の問題には、いくつか共通した性質があります。
一つ目の性質は、接線同士の交点の\( x \)座標は、それぞれのx座標の中点になるというものです。
今回の問題でいえば、左側の接点が\( x = -1 \)、右側の接点が\( x = 3 \)なので、その中点は\( \dfrac{-1 + 3}{2} = 1\)です。これは交点の\( x \)座標と一致していますね。
二つ目の性質は、交点の左側にできる面積と、右側にできる面積は等しくなるというものです。
実際、今回の問題でも\( S_1, S_2 \)ともに\( \dfrac{8}{3} \)となっています。
これらの性質は、記述問題で証明なしに使用することこそ危険なものの、マーク式の問題であれば問題なく使えます。
また、記述問題であっても検算で使えたりと、知っておくと多少は便利なものです。頭の片隅に収納しておきましょう。
なお、証明については以下に折りたたんでおきます。余力があるかたはご確認ください。
まずは交点が中点となることから示していきましょう。
2次関数を\( y = ax^2 + bx + c \)とし、接点を\( x = \alpha, \beta (\alpha < \beta )\)とします。
また、それぞれにおける接線を\( y_1 = m_1 x + n_1 \)、\( y_2 = m_2 x + n_2\)とします。
これらの接線は、当然ながら2次関数と接していますので、
\( (ax^2 + bx + c) - (m_1 x + n_1) = a (x - \alpha)^2, (ax^2 + bx + c) - (m_2 x + n_2) = a (x - \beta)^2\)と因数分解可能です。
さらにこれらを\( m_1 x + n_1 = (ax^2 + bx + c) - a (x - \alpha)^2, m_2 x + n_2 = (ax^2 + bx + c) - a (x - \beta)^2 \)と式変形します。
ここで、接線同士の交点を求めるために、直線同士を連立してあげると、以下のような流れになります。
\( m_1 x + n_1 = m_2 x + n_2\)
\( (ax^2 + bx + c) - a (x - \alpha)^2 = (ax^2 + bx + c) - a (x - \beta)^2 \)
\( (x - \alpha)^2 = (x - \beta)^2 \)
\( x^2 -2 \alpha x + \alpha^2 = x^2 - 2 \beta x + \beta^2 \)
\( 2 (\alpha - \beta)x = \alpha^2 - \beta^2 \)
\( 2 (\alpha - \beta)x = (\alpha + \beta)(\alpha - \beta) \)
\( \alpha \neq \beta \)より、\( \alpha - \beta \neq 0 \)です。気兼ねなく両辺を\( \alpha - \beta \)で割ると、
\( 2 x = \alpha + \beta \)
\( x = \dfrac{\alpha + \beta}{2} \)
となり、これは中点と等しいことがわかります。
接点も個別に文字でおくことで、煩雑な計算を防いでいるのがポイントとなります。
次は面積です。まずは左側の面積\( S_1 \)を、2次関数が下に凸である条件のもとで求めてみましょう。
2次関数が上、接線が下。範囲は\( \alpha \leqq x \leqq \dfrac{\alpha + \beta}{2} \)なので、
\( S_1 = \int_{\alpha}^{\frac{\alpha + \beta}{2}} \left\lbrace (ax^2 + bx + c) - (m_1 x + n_1) \right\rbrace dx \)
\( = \int_{\alpha}^{\frac{\alpha + \beta}{2}} \left\lbrace a(x - \alpha)^2 \right\rbrace dx \)
\( = \dfrac{a}{3} \left\lbrack (x - \alpha)^3 \right\rbrack_{\alpha}^{\frac{\alpha + \beta}{2}} \)
\( = \dfrac{a}{3} \left\lbrace \left( \dfrac{\alpha + \beta}{2} - \alpha \right)^3 - (\alpha - \alpha)^3 \right\rbrace \)
\( = \dfrac{a}{3} \left( \dfrac{\beta - \alpha}{2} \right)^3 \)
\( = \dfrac{a}{24} \left( \beta^3 - 3 \beta^2 \alpha + 3 \beta \alpha^2 - \alpha^3 \right) \)
次は右側の面積\( S_2 \)です。同じく2次関数が上、接線が下。範囲は\( \dfrac{\alpha + \beta}{2} \leqq x \leqq \beta \)ですので、
\( S_2 = \int_{\frac{\alpha + \beta}{2}}^{\beta} \left\lbrace (ax^2 + bx + c) - (m_2 x + n_2) \right\rbrace dx \)
\( = \int_{\frac{\alpha + \beta}{2}}^{\beta} \left\lbrace a(x - \beta)^2 \right\rbrace dx \)
\( = \dfrac{a}{3} \left\lbrack (x - \beta)^3 \right\rbrack_{\frac{\alpha + \beta}{2}}^{\beta} \)
\( = \dfrac{a}{3} \left\lbrace (\beta - \beta)^3 - \left( \dfrac{\alpha + \beta}{2} - \beta \right)^3 \right\rbrace \)
\( = -\dfrac{a}{3} \left( \dfrac{\alpha - \beta}{2} \right)^3 \)
\( = -\dfrac{a}{24} \left( \alpha^3 - 3 \alpha^2 \beta + 3 \alpha \beta^2 - \beta^3 \right) \)
\( = \dfrac{a}{24} \left( \beta^3 - 3 \beta^2 \alpha + 3 \beta \alpha^2 - \alpha^3 \right) \)
以上より、2次関数が下に凸であるとき、\( S_1 = S_2 \)が成り立つことが示されました。
上に凸の場合も似たような計算で示すことができます。2次関数と接線の順番こそ入れ替わるものの、結局2乗の形に因数分解できることは変わりません。
練習がてら、証明してみてください。
なお、これらをまとめて、\( \dfrac{1}{12} \)公式として取り扱われることもあります。
興味がある方はチェックしてみてください。
解説は以上になります。いかがでしたか。
例題で触れたように、接点が登場する面積であれば、\( \dfrac{1}{3} \)公式が利用できる可能性があります。
使い所を見逃さないようにしつつ、たくさん練習してマスターしていきましょう。